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河内保二主宰の経済工学リサーチの発信情報

河内保二主宰の経済工学リサーチの発信情報

21世紀の生産は客業生産という主張

20世紀に威力を発揮した大量生産は現在では通用しなくなっている。大量生産を続けると、地球がもたないともいわれている。生産は顧客のために行われるものであり、このために顧客にとって適種、適質、適量、適価、適期 の生産が行われなくてはならない。いたずらに大量生産を追いかけるのは、時代に適合しない態度であり、ミスマッチであるといわれるようになってきている。これは大量生産が結果的に大量廃棄を招き、その処置が大きな社会問題にまで及ぶことになるだけでなく、地球資源の浪費のために資源枯渇の破局をもたらすことになるからである。また大量生産はコストダウンにとって最強の方法と考えられてきたが、現実には膨大な作り過ぎによって売れ残りの巨大なロスを生じ、処分売り値引き(マークダウン)で価格の低落を結果し、生産の付加価値を喪失してゆくばかりで、生産企業そのものの存続を脅かすに至っているほどである。そうした状況の中で、生産した商品の価値は顧客が決めるという時代になっている。顧客が認めることで生産した商品が価値付けられるのである。現在は生産は工業により行われているのであるが、工業とは作り手の業ということで、結果はプロダクト・アウトの生産となっているのが現状である。しかし、生産は本来、顧客のためであることが求められ、マーケット・インの生産であることが目指されている。この研究では、工業生産からスタートし、脱工業生産を経て、顧客のための客業生産を実践するためのガイドとなることを意図している。そして顧客のための生産を行うモデル縫製工場とはいかなるものかを明らかとし、モデル縫製工場を実現するための方向を示し、実践してゆくためのガイドを提供しようとするものである。その実践に当たっては先ず、意識そのものから顧客志向の生産という観点に立つことが欠かせない。その意識の変換には、先ず言葉が変わらなければならない。顧客のための生産といいつつ、作り手のものづくりの業である「工業」といっていたのでは、意識は変換しないだろう。そこで本書では、顧客のためのものづくりの業としての生産は「客業生産」と呼ぶことにしている。20世紀の大量生産は、21世紀に入り、顧客の個別の注文に応じる個別生産に変わってゆくのである。従って、工業量産として考えられてきたものづくりの業は、大量消費から大量廃棄をもたらし、遂に行き詰まりに至って、脱工業生産が叫ばれるようになってきている。本書ではもの作りの業を客業個産として生産を再構築し、ものづくりに携わる人の意識を変え、その上に客業個産をどう実現してゆくかを具体的に示し、特に小量・短納期の生産を主要項目に置いて、縫製工場での実践をガイドすることとしている。実践のためには、単に必要事項の説明に止まらず、それが実践に移るためのチェックリストを作成し、それによるチェックの各項目について自己診断できるようにし、現時点で生産についてどの水準で理解しているかが認識できるようにし、もし十分理解していない項目があれば本研究により用語の意味を読んだり、該当項目の解説を理解するようにして知識を積み、その上に立ってより具体的に、着実に望ましいモデル縫製工場の構築へと実践できるように企図してまとめたものを発表しようとするものである。


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